映画「間奏曲はパリで」

2015年4月4日(土)、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA 他全国ロードショー

おひとりさまで行く、恋の都パリ。迷える主婦ブリジットが出会ったものとは―。

イザベル・ユペール『8人の女たち』、ジャン=ピエール・ダルッサン『ル・アーブルの靴みがき』

監督・脚本:マルク・フィトゥシ 共演:ミカエル・ニクヴィスト『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』、ピオ・マルマイ

  長年一緒にいる夫婦なら誰しも、一度や二度の危機に見舞われたことがあるのではないだろうか。どんなに相思相愛で結ばれても、仕事の忙しさや日常のルーティーンのなかでいつの間にか相手への情熱や思いやりが失われてしまうことがある。『間奏曲はパリで』は、そんな熟年夫婦の姿をあたたかい眼差しで描き出し、本国フランスで大きな話題を呼んだ。

バターやチーズの名産地としても知られるフランスの北東部、ノルマンディ地方が舞台。畜産業を営むグザヴィエとブリジットは、子供も巣立ち、いまは倦怠期を迎えている。そんなとき、パリから来た姪の友人のハンサムな青年と知り合い、久々に女心をくすぐられるブリジット。パリとアヴァンチュールという抗し難い誘惑に駆られた彼女は、ついに大胆な計画を企てる。

 しっとりとした大人の色香とともに、ときめきを胸に秘めたエイジレスなヒロインを魅力的に演じるのは、フランス映画界を代表する大女優のひとり、イザベル・ユペール。ミヒャエル・ハネケ、マルコ・ベロッキオ、クロード・シャブロル、マイケル・チミノら、ヨーロッパからハリウッドまで幅広く活躍し、ホン・サンスなどアジア映画の才能とも積極的にコラボレートしている。本作では、夫を愛しつつも非日常的なアヴァンチュールに心をときめかせる女性の可愛らしさを表現し、アラフィフ世代の圧倒的な共感を集める。
ユペールの相手役を務めるのは、そのいぶし銀の味でフランス映画界に欠かせない名優、ジャン=ピエール・ダルッサン。アラン・レネ、ジャン=ピエール・ジュネ、セドリック・クラピッシュらの作品に出演している。またアキ・カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』(2011)で強面の下に人情味を秘めた刑事を好演し、高い評価を得た。愛する妻の浮気に傷つきながらも懐の深さを見せる度量の大きさに、観客はほろりとさせられるに違いない。

監督はこれが長編4作目となるマルク・フィトゥシ。2作目の『Copacabana』(2010/日本未公開)でユペールと彼女の娘、ロリータ・シャマーの共演を実現させ、カンヌ国際映画祭批評家週間部門に出品した。自身で脚本も手掛ける実力派として注目を浴びている。

 奥深い人間ドラマとともに、本作に欠かせない要素がパリの街だ。エッフェル塔やセーヌ川、チュイルリー公園やコンコルド広場の観覧車、オルセー美術館など、ブリジットの休日を彩るパリの名所が多数登場。さらに瀟洒なレストランやファッショナブルな町並みなど、大人が楽しめるパリの魅力が存分に描き出される。

 原題の“La Ritournelle”はフランス語でルーティーンの意味。日常からの冒険(間奏曲)を描くと同時に、かけがえのない絆で結びついた夫婦愛を見つめた、大人のための珠玉の恋愛ドラマである。

フランスの北東、ノルマンディで農場を営む夫婦のブリジット(イザベル・ユペール)とグザヴィエ(ジャン・ピエール=ダルッサン)。子供が巣立ってからというものの、穏やかで幸せだけど平凡な毎日。遊び心を忘れないブリジットは、変化をもたらそうと努力をしても、実直で無骨な夫は無関心。
ある日、隣家のパーティで出会った魅力的なパリジャン・スタン(ピオ・マルマイ)との楽しい時間が、彼女の心に火をつける。ひとりパリ行きの手配を始め、未知なる期待を胸に、人生を変える休日へ出かけるのだった。
イザベル・ユペール(ブリジット)
1953年、パリ生まれ。コンセルヴァトワールで学んだ後、映画デビュー。70年代からジャン=リュック・ゴダールやクロード・シャブロルの作品に出演する一方、マイケル・チミノの『天国の門』(1981)でハリウッドに進出し国際的なスターに。『主婦マリーがしたこと』(1988)でヴェネチア国際映画祭女優賞を受賞。ミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』(2001)で二度目のカンヌ国際映画祭最優秀女優賞に輝く。代表作に『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』(1995)、『8人の女たち』(2002)、『愛、アムール』(2012)など。2012年にはホン・サンス監督作『3人のアンヌ』にも出演、コメディエンヌとしての魅力を披露。フィトゥシ監督と初めて組んだ『Copacabana』(2010/日本未公開)では娘のロリータ・シャマーと共演した。フランスを代表する女優。
ジャン=ピエール・ダルッサン(グザヴィエ)
1953年、パリ郊外生まれ。コンセルヴァトワールで演技を学んだ後、舞台経験を経て映画界に。ロベール・ゲディギァン監督と何度もコラボレーションをするかたわら、セドリック・クラピッシュの『百貨店大百科』(1992)、セザール賞の最優秀助演男優賞に輝いた『家族の気分』(1996)、アラン・レネの『恋するシャンソン』(1997)、アニエス・ジャウィの『ムッシュ・カステラの恋』(1999)、ジャン=ピエール・ジュネの『ロング・エンゲージメント』(2004)などに出演。名脇役としての地位を確立する。代表作にアキ・カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』(2011)。自ら監督デビューも果たしている、フランス映画界の重鎮的存在。
ミカエル・ニクヴィスト(ジェスパー)
1960年、ストックホルム生まれ。アイスホッケーの選手を目指すが怪我がもとで断念。17歳のときアメリカに留学し演劇に目覚める。その後スウェーデンに戻り、国立アカデミーで学んだ後、デビュー。多くのテレビドラマに出演し人気を得る。代表作に「ミレニアム」TVシリーズ(2010)、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)、キアヌ・リーヴス主演作『ジョン・ウィック(原題)』(2015年日本公開予定)など。
ピオ・マルマイ(スタン)
1984年、ストラスブール生まれ。舞台美術家の父と衣装デザイナーの母を持ち、コンセルヴァトワールで演技を学ぶ。舞台デビューを経て、その後映画界に進出。代表作にアナイス・ドゥムースティエと共演した『D’amour et d’eau fraîche』(2010)、オドレイ・トトゥ主演の『ナタリー』(2011/日本未公開)、ルイーズ・ブルゴワンと共演した『理想の出産』(2011)などがある。若手有望株として現在人気上昇中。
アナイス・ドゥムースティエ(マリオン)
1987年、リール生まれ。7歳から演劇を学び始め、12歳のときに小さな役で映画デビュー。その後パトリス・シェローの『タイム・オブ・ザ・ウルフ』(2003/日本未公開)でイザベル・ユペールと共演。その後ジュリエット・ビノシュ主演の『ジュリエット・ビノシュ in ラヴァーズ・ダイアリー』(2011)や、オドレイ・トトゥ主演の『テレーズ・デスケルウ』(2011/日本未公開)などで注目される。最新作は、パスカル・フェランの『Bird People』(2014)と、フランソワ・オゾンの『Une Nouvelle Amie』(2015年日本公開予定)。
監督・脚本:マルク・フィトゥシ
英語と美術史を学ぶもすぐに映画へ方向転換し、パリで脚本を、ロサンゼルスで演出を学ぶ。初期の短編から脚本と監督の両方に名を連ね、本作に至るほぼ全作で両方を担当する。セザール賞にノミネートされた中編『Bonbon au poivre』(2005)でその名を映画業界で知られるようになり、成功を夢見る若いアーティストたちをテーマにした処女長編『La Vie d'artiste』(2007)でミシェル・ドルナノ賞を受賞。イザベル・ユペールとその娘ロリータ・シャマーの共演が話題を呼んだ長編2作目『Copacabana』(2010/日本未公開)がカンヌ国際映画祭批評家週間に出品される。サンドリーヌ・キベルラン主演のコメディ・ミステリー『探偵ポーリーヌ』(2012/日本未公開)では、これまでとは全く違う軽妙洒脱なスタイルに挑戦した。
撮影:アニエス・ゴダール
フランスの現役撮影監督のなかで5本の指に入ると言われる。『パリ、18区、夜。』(1994)以降、クレール・ドニのほとんどの長編を撮影している他、『天使が見た夢』(1998)、『かげろう』(2003)、『マルタのことづけ』(2013)など作品多数。『美しき仕事』(1999/日本未公開)でセザール賞最優秀撮影賞を受賞。フランス撮影監督協会(AFC)とアカデミー・オブ・モーション・ピクチャー・アーツ・アンド・サイエンス(AMPAS)のメンバーでもある。
編集:ロール・ガルデット
短編の編集を経て、2001年から長編に携わるようになる。『しあわせの雨傘』(2010)以来、『危険なプロット』(2012)、『17歳』(2013)、最新作の『Une nouvelle amie』(2015年日本公開予定)まで、フランソワ・オゾン作品を立て続けに手掛ける。その他代表作に、『キャラメル』(2007)、マイウェンの『パリ警視庁:未成年保護部隊』(2011/劇場未公開)、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキの『Un château en Italie』(2013)など。
美術:フランソワ・エマニュエリ
フランスで売れっ子のプロダクション・デザイナー兼アート・ディレクター。『青春シンドローム』(1994)、『家族の気分』(1996)、『スパニッシュ・アパートメント』(2002)と、セドリック・クラピッシュ作品を多く手掛ける他、『真夜中のピアニスト』(2005)、『最強のふたり』(2011)など、ヒット作を担当。新作は2014年フランスで1200万人の動員を集め話題になったコメディ映画『Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu?』。